わたしを動かした「出逢い」のはなし~プロパティエージェント株式会社 代表取締役 中西聖~
わたしを動かした「出逢い」のはなし
新しいチャレンジや夢に向かって走りつづけている輝くビジネスパーソンを対象に「出逢い」についてのエピソードをインタビューさせていただく本企画。 仕事に対するモチベーションや新しい人脈を作る上でのヒントが見つかるかもしれません。
2004年に27歳の若さでプロパティエージェント株式会社を設立。「不動産と不動産サービスの価値を創造、向上し顧客の未来を育み最高の喜びを得る」を企業理念に抱え、昨年東京証券取引所JASDAQに上場を果たしました。今後、企業の大きな不動産相場比較アプリ「ふじたろう」の開発を軸に、代表取締役 中西 聖さんと「ふじたろう」共同創始者CTOの何(ホウ)さんに『わたしを動かした出逢い』についてインタビューさせていただきました。
「イノベーションを起こし続けること」
ー本日は宜しくおねがいします。まず、中西さんが起業された経緯を教えてください。
前職で不動産会社に勤めるなか、「顧客の目線でナンバーワンに立ちたい」「開発する不動産の商品で一番を取りたい」「売り上げにおいてもトップを取りたい」この三つの意欲が沸いてきました。当時、部長職として経営にも足をつっこんでいましたが、会社や業界自体に課題を感じていたので、この三項目をひっくり返すようなものにしたいという想いがありました。
もうひとつは「ビジョナリーカンパニー」と言う本を読み、『偉大な企業』=価値観に基づいてイノベーションを起こし続ける企業、という定義のもと、大きな資本やカリスマ社長じゃなくても創りあげることができるという主旨を読み、挑戦したいと思いました。
この2つの夢、想いを果たすには前職の会社や環境ではすでに成熟しすぎていて達成が難しいという考えに行きつき、新しい器が必要だと感じ起業することにしました。
起業し、まずは先ほどの3つの項目に準じて、中堅企業の中で「商品の質一番」「顧客の評価一番」「売り上げ90億~100億」を短期ビジョンに設定しました。そして、今年3月末で達成することができました。
中期ビジョンは、大手含めてトップになること。事業領域の拡大。この2つです。
今年2月にローンチした不動産相場比較アプリ「ふじたろう」は、事業領域の拡大の一環です。
そして、長期ビジョンは夢であるビジョナリーカンパニーを作る、イノベーションを起こし続ける企業であること。この部分でも「ふじたろう」のサービスは深く関わりがありますね。
「不動産情報の非対称性を無くしたい」
ー「ふじたろう」の構想を教えてください。
サービスの構想を描いたきっかけは3つあります。
一つ目は、数年前にやってきた人工知能の波です。
僕の一番大好きな式に「ヘドニックアプローチ」があります。この数式のことを考えながらゴハンを食べられるくらいに好きなんですが(笑)
これは、不動産の価格を駅からの距離、階数、部屋数など、様々な要素から割り出し、定量的に表すことができる数式で、術的にも非常に歴史の深い式なんです。この数式があれば、論理的には日本全国のマンションの価格が全て出せます。
今まで人と労力がかかっていた「ヘドニックアプローチ」を応用し、また人工知能があれば瞬時に算出できるのではないかと考えました。
二つ目は、不動産情報の非対称性も無くしたい想いです。
我々は、不動産を売る側なので、情報の非対称性が過去からながく続く不動産業にとっては有益であろうという気持ちは分かるのですが時代の流れからいくと、情報の非対称性があるから高く売れるビジネスというものは明らかに壊れると思っています。
たとえば、良い例が比較サイトの価格.comですよね。いくつも生産される商品に対しては複数の取扱店が価格の設定を行え、ユーザーは安い方を選ぶことができます。しかし、不動産は世界にひとつしかないので普通は価格の比較が成り立たないわけです。
これは、今の時代の流れにそぐわないのでは無いか、と思っています。
そして、三つ目は、中古住宅の流通に関して。
アメリカでは中古住宅の流通が80%と言われていますが、日本では約14%です。あとは新築物件なんですね。国交省においても、これは異常と捉え、中古住宅の流通を2倍にする方針を固めています。中古住宅の流通が多いところのほうが物件の価値はあがるので、中古住宅としての価値を適切に評価されるべきという考えがあります。
この3つの想いと考えが「ふじたろう」の構想になります。
イノベーションを起こし続ける企業であること。そのためにも「ふじたろう」は重要な役割を担っている。
「足りないのはITに関する知識だった」
ーそこの構想を実現するために中西さんの不動産への熱い想いや知識に加え、異分野でのITや人工知能に関する技術や知見を必要とされていたそうですが、後に共同開発者となる何(ホウ)博士との出逢いについて教えてください。
(何さん)2014年12月、中国へ帰省する際、飛行機の隣の席にたまたま座っていたのが中西さんです。そのときは、不動産に対して熱く、良い人だった。と言う印象で別れましたが、その後、翌年1月にメールでアプローチを受け、食事をすることになり、これまでお互い何をやってきたか、経歴などを話ました。
その時に中西さんの「ふじたろう」の構想などを聞き、「インターネットビジネスは日々変化するのでアイディアがあったらすぐやらないと、他の人が同じことをやってしまうかもしれない」とアドバイスしました。
私は、ビッグデータも専門なので、データのロンダリング、情報抽出から知識を得るプロセスを大学で経験していました。
「ふじたろう」のコンセプトは、不動産の大量の取引事例から、マンションの有益な情報を得て、次にマンションの価格がどう推移していくのかを予測する。と言う、まさに、我々が研究してきたことやノウハウを全て活かせる恵まれたチャンスであると思いました。
そして、社長が良い人でとても悩んでいた姿も見て、一緒に実現させようと、すぐにプロトタイプの制作を開始しました。
(中西さん)当時、ホウさんは中国の大学からもたくさんオファーがきていたので飛行機での出逢いが分岐点でもあった。偶然の出逢いから、この人なら夢を実現させてくれるかもしれない、と思って年末年始は早く逢いたい想いでいっぱいでしたね(笑)
はじめは顧問として週一ほどの関わりでしたが、ビジネスの話を重ねて、3回目。是非一緒にやりましょうと三顧の礼(中国のことわざ)でお願いしなんとか了承を得ました。
「アジア全域でクロスボーダー化を目指す」
ー「ふじたろう」の今後の展望は何ですか
(何さん)2016年2月に「ふじたろう」をリリース以降、会員も査定数も順調に伸びています。査定数二間しては6月から前月比50%の成長率です。今後は、中国の展開も視野に入れ準備を進めています。中国の富裕層による日本での不動産購買欲が高まってきていますが、現状、中国人専門の仲介人が抱えている物件数はまだとても少ないです。
私たちは兼ねてから不動産メインに行ってきた強みや1,000件を越える物件数を持っているので、中国のお客様にも「ふじたろう」を通して良い物件を紹介したいと思っています。
「ふじたろう」のサイトから、不動産に関する知識が無くても、ヒートマップや客観的データを自分で調べることができます。
また、新しい取り組みとして「チャットボット」機能を使えば、購入予算はあるけど、どこに投資すればいいかわからないと言ったユーザーのニーズ掘り起こしや調整、細かな提案なども可能になりました。
実際に、これから中国に事務所を構え中国の方と接する機会を作りプロモーションもしていく予定です。
(中西さん)世界的に金融緩和が進んでいる影響、アジアの富裕層がすごい勢いで伸びる事を考えれば海を越えて不動産の購入ニーズが高まっています。不動産投資をする人が増え流動性が高くなる。つまり、不動産の価値が相対的に高くなってきており、不動産インベストメントも増えて行くと見込んでいます。
台湾、香港への販売はすでに行っているので、これから中国へ挑戦し、アジア全域を網羅するクロスボーダー化を目指しています。
ーひとりのビジネスパーソンとして心がけていることはありますか。
特に心がけているわけではないですが、自分の想定外にある情報や価値観が違う素晴らしい人たちを周りに置くことを心がけています。
尊敬できる人たちと情報交換したりすることを大切にしていますね。
また、読書も好きで今は司馬遷の『史記』にはまっています。もっと早く読めばよかった!とても学ぶことが多いですね。
ー中西さんの夢を教えてください。
冒頭に戻りますが、やはり偉大な企業を作品として作り上げるのは夢ですね。みんなの記憶に残る何年も続く会社にしたいです。
■「ふじたろう」について
『ふじたろう』は、全国約13万件(2016年3月現在)のマンション相場情報を検索できる、日本最大級の不動産相場サイトです。物件情報だけでなく、現在の相場価格や1年後の予想価格、賃料相場価格、利回り、提携不動産会社による詳細査定、価格推移グラフ、気になるエリアの周辺情報、現在販売中の物件情報まで、売却に関するあらゆる情報・サービスをワンストップで提供しています。『ふじたろう』は「相場情報」通し、中古マンションの価値向上、流通量の増加を目指し、より多くのユーザーにマンション売却の喜びを届けてまいります。
『ふじたろう』URL: https://www.fujitaro.com/
プロフィール
中西 聖(なかにし せい)
1977年生まれ。高知県出身。1995年に西砂建設株式会社入社し、施工管理を経験。
その後大芳計画株式会社にて不動産販売事業に従事。1998年に株式会社ヴェルシステムズへ転籍。2004年、プロパティエージェント株式会社設立。建物内サービスシステム特許しを取得、日本プロパティ開発株式会社取締役就任。2012年大連理工大学研修プログラム終了。城西大学大学院経営学研究科イノベーション専攻修了。2015年明治大学大学院グローバルビジネス研究科修了。2015年、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場。
何 書勉(ほう しゅうめん)
1978年中国上海生まれ、1997年来日。専門はユビキタス・コンピューティング及びマルチメディア・データベース。2007年京都大学大学院を修了後、楽天に入社し楽天技術研究所を経て、2009年執行役員・チーフサイエンティスト。楽天の海外新卒採用や中国進出を手がけ、楽天初の海外開発センターを立ち上げる。2010年楽天中国現地法人、楽酷天網絡科技有限公司CEO、開発責任者として楽天中国ECモールを立ち上げる。2011年よりグリー中国のVP(副総裁)として中国におけるスマートフォン向けゲームの開発を統括。2014年Ptmind Inc.のExecutive Director。2015年ふじたろう 共同創始者 CTOに着任。